
2025年6月8日から10日にかけて、日本貿易振興機構(JETRO)が主催する「米国量子ミッション(イリノイパート)」が、シカゴおよびその近郊にて開催されました。本ミッションには、日本から企業・研究機関・政府系組織など約30団体が参加し、米国における量子技術の先進的な取り組みを視察するとともに、現地の研究者や起業家との交流を通じて、日米の連携をさらに深化させることを目的としました。
ミッションの幕開けとなった初日は、参加者がシカゴに集合し、市内のレストランで開催されたWorld Business Chicago(WBC)主催のウェルカムレセプションに参加しました。WBCは市の公式な経済開発を促進する機関で、公民連携による非営利団体であり、企業誘致、雇用創出、イノベーション促進を通じて、シカゴを世界有数のビジネス都市として発展させることを使命としており、早速意見交換が交わされました。
2日目は、シカゴ大学のPolsky Centerにて、ビジネス環境や量子分野についてのレクチャーが行われました。続いて、Hyde Park Labs、PsiQuantum、qBraid、Infleqtionといった、シカゴの量子系スタートアップおよび研究機関を訪問。それぞれの施設では、企業独自の量子技術や研究開発の進展、今後の応用分野に関する説明がなされました。
最終日である3日目は、シカゴ郊外にあるアルゴンヌ国立研究所を訪問しました。1946年に設立されたこの国立研究所では、量子科学を含む広範な研究が行われており、その先進性に触れる貴重な機会となりました。午後は、EeroQやmHubといったシカゴを拠点とする量子・ハードテックスタートアップを訪問。特にmHubでは、「J-Bridge」イベントが開催され、日米の先進企業によるピッチプレゼンテーションとネットワーキングが行われました。
J-Bridgeイベントでは、日本企業とシカゴのスタートアップがそれぞれの量子関連技術を紹介。Quantumdataの量子暗号技術、Nanofiber Quantum Technologiesの量子電磁力学技術、Kyoceraの先進セラミックス応用、国立がん研究センター東病院の医療研究などが紹介されました。一方、米国側からはqBraidやInfleqtion、MemQといった注目の企業が登壇し、光子量子ビットや中性原子システム、次世代半導体などに関する最新技術が披露されました。レセプションでは、将来的な連携の可能性について積極的な対話が行われました。
今回の米国量子ミッションは、量子分野における国際的な連携を強化する大きな一歩となりました。Q-STAR会員を含む参加各団体は、本ミッションを通じて得られた知見とネットワークをもとに、今後の共同研究や事業展開、政策提言へとつなげていく予定です。イリノイ州を中心とする米国の量子エコシステムは、今後さらに世界的な注目を集めることが予想されています。
JETRO説明資料 https://www.jetro.go.jp/newsletter/cgo/2025/GR/Jetro_Orientation_250528.pdf