Q2B24 Tokyo 〜量子コンピューティングの実現に向けて〜」にてQ-STAR岡田実行委員長が登壇いたしました。
【開催日時】2024年7月24日(水)~7月25日(木)
【会場】グランドハイアット東京
【主催】QCWARE
Q-STAR 岡田実行委員長 講演概要(25日午後)
🔳Q-STARについて
Q-STARは、量子技術の産業創出に特化した団体です。量子コンピュータ、センシング、マテリアル、通信といった幅広い分野をカバーし、「2030年には1千万人が量子技術を知らぬ間に利用している社会の実現」を目標に掲げています。Q-STARの特徴は、ベンダー企業だけでなく、ユーザー企業が会員の半数以上を占め、ユーザー視点での議論が活発に行われている点です。これは世界的にも珍しい取り組みであり、ユーザー企業が主導する形での議論が行われています。また、Q-STARはスタートアップの支援にも力を入れており、現在17社が準法人会員として参加し、今後もこの数は増加する見込みです。
Q-STARの日々の運営は実行委員会が担っており、海外団体とのコミュニケーションや標準化、知財、そして広報活動を中心に取り組んでいます。量子技術のカテゴリー別に部会を設置し、様々なースケースを議論しています。机上のディスカッションのみに留まらず、G-QuATと連携し、実環境を用いて具体的な実証を進めながら、量子技術の活用方法を内外に情報提供しています。今年5月には、「量子技術によるSDGs推進部会」を設立しました。量子技術で国際的な課題をいかに解決すべきかというテーマについて、積極的に発信していきます。
量子コンピューティングと関連する領域においては、さまざまな技術が使われています。その中でもイジング型は日本の強みであり、日系企業各社が既存のコンピュータ上で量子状態をシミュレーションするエンジンを世の中に提供し、社会課題が解かれ始めているという状況が日本の特色です。将来的に、現行のシミュレータが徐々に量子コンピュータに置き換わっても、日本がいち早くシミュレータを使って課題解決したという実績やそれによって得られた知見が国際的な差別化に繋がるとQ-STARは捉えています。
🔳深化する国内外の協力関係
量子技術の社会実装に向けてG-QuATとの連携も深めており、共同研究契約を締結したことは非常に重要なポイントです。内閣府のSIP第三期で量子のカテゴリーが認定され、予算をつけていただいたことが契約締結の背景の一つです。ユースケースの実証、教育プログラムの開発実践、そしてスタートアップ育成・市場参画支援のためのエコシステム構築などの取組みを計画中です。
また、Q-STARはグローバリゼーションにも注力しています。数ある量子関連企業が、グローバルで継続的なコミュニケーションを行うことは困難が伴いますが、Q-STARが有力なハブとして機能していることを日々の活動を通じて実感しています。
昨年1月31日には、米国QED-C、カナダQIC、欧州QuIC、そしてQ-STARの4団体でICQIAを立ち上げました。量子エコシステムを推進し、グローバルのコミュニケーションとコラボレーションを強化することを目的としています。ICQIAの最も大きな成果は、サプライチェーンマップの整備です。各国の量子関連団体がどのような開発を行い、どのような技術を有しているのか、そしてそれが量子技術のどの領域に該当し、どのように利活用されているのか定義し、サプライチェーンマップに配置することで、国際的なコラボレーションの器を作りました。サプライチェーンマップは、グローバルで会話が成立するためのスタンダードとなり、国際的な協力関係を深め、産業化を後押しするものです。
🔳グローバルエコシステム構築に向けた日本の貢献
現在、量子コンピュータは色々な方式が世に出ていますが、どれが主流となるかはまだ決まっていません。そこでQ-STARは、どの方式の量子コンピュータにも対応するソフトウェアプラットフォームの必要性に着目し、その実現に向けた議論をここ一年真剣に行ってきました。このプラットフォームをG-QuATにも実装し、誰でも使える環境を構築していきたいと考えています。
また、Q-STARは量子コンピュータのソフトウェアスタック図の検討も実施しました。スタック図の中心に置かれているミドルウェア層が問題を整理し、量子コンピュータの方式に合わせて解を出すというもので、現在我々はこの仕様のドキュメント化に注力しています。
日本は、イジングマシンの分野で世界的にリードしており、実際の課題を解決した例がいくつも出てきています。Q-STARは、日本が得意とするイジングマシンで課題解決が可能であることを世界にアピールし、グローバルエコシステムの構築を推進するとともに、量子技術の産業化を後押しします。量子社会の実現に向けて、今後も日本の強みと独自性を活かした取組みを加速してまいります。